退職は直感で決めてもいい?辞めたい理由がわからないときの考え方
「そろそろ、この仕事を離れたい」
そう思っても、理由を聞かれると、うまく答えられない。
給料に大きな不満はない。仕事には慣れている。お世話になった人もいる。辞めたいと思う日がある一方で、もう少し続けられる気もする。
次の仕事が決まっていないなら、なおさらだ。
「辞めて、何をするの?」
そう聞かれると、自分でも気持ちが揺らぐ。はっきりした目標がないまま離れるのは、無責任なのだろうか。
でも、説明できる理由がそろうまで、自分の気持ちを後回しにしなくてもいい。
「ここで働き続ける自分が、少し違う気がする」
「別の場所で、違う仕事をしてみたい」
そんな直感も、これからを考える手がかりになる。
すぐに退職を決める必要はない。感じていることを確かめながら、暮らしを守る準備をしていく。その途中で、自分が選びたい働き方も見えてくるかもしれない。
1.条件がよくても、続けたいとは限らない
仕事を選ぶとき、給与や役職は比べやすい。
仕事内容、通勤時間、会社の将来性。今より条件がよくなるなら、転職する理由も説明しやすい。
ただ、働く毎日は、それだけでは決まらない。
朝、職場に向かうときの気持ち。会議で自分の考えを話せるか。帰宅してから、仕事以外のことに気持ちを向けられるか。
条件の一覧には書きにくいけれど、毎日を過ごす自分には大きなことだ。
以前は楽しかった仕事が、今は重く感じることもある。得意な仕事でも、これから先も続けたいとは限らない。
経験が増える。家族との暮らしが変わる。仕事以外に、時間を使いたいことができる。
自分が大切にしたいものも、少しずつ変わっていく。
今の仕事のよさを認めながら、これからの自分に合うかを考えていい。
お世話になった職場でも、次の場所を選ぶことはできる。
2.「なんとなく」の中に、これまでの毎日がある
「なんとなく、離れたい」
そう言うと、思いつきのように聞こえるかもしれない。
でも、その気持ちが、いつからあるのかを振り返ってみよう。
担当が増えて、落ち着いて仕事をする時間がなくなった。相談したかったことを、何度も飲み込んだ。評価されるほど、同じ役割から離れにくくなった。
一つの出来事では説明できなくても、積み重なったものはある。
反対に、職場の外で過ごした時間が、きっかけになることもある。
違う仕事をしている人の話が面白かった。久しぶりに学んで、もっと知りたいと思った。休暇中、仕事の予定がない朝がうれしかった。
そこで初めて、今まで足りなかったものに気づく。
直感という言葉には、急に答えが浮かぶような印象がある。けれど、退職を考えるときの直感には、長く感じてきたことが含まれているのかもしれない。
まだ言葉にできないからといって、何も考えていないわけではない。
理由を整える前に、何を感じてきたかを確かめてみよう。
「忙しい」なら、どんな忙しさがつらいのか。「違う仕事がしたい」なら、何に興味があるのか。
きれいにまとめなくていい。自分だけが読むメモに、そのまま書いてみる。
3.辞めたい気持ちを、少し確かめる
嫌なことがあった日は、全部投げ出したくなることもある。
少し休んだら、また続けたいと思うかもしれない。担当が一つ減れば、今の職場で働きやすくなるかもしれない。
だから、直感を大切にしながら、何を変えたいのかも見ていこう。
仕事の量を減らしたいのか。今の役割を離れたいのか。職場を変えたいのか。しばらく働かずに過ごしたいのか。
「辞めたい」の中にも、いくつかの希望がある。
例えば、仕事内容は好きで、帰宅時間だけがつらいなら、担当や勤務を相談する道もある。
休めるようになっても、ここで働く自分を思い浮かべると気が重い。別の仕事を知るたびに、そちらに気持ちが向く。そういうことが続くなら、退職も具体的な選択肢として考えたい。
一つの答えを急いで出さず、時おり、同じ問いに戻ってみる。
「今の負担が減ったら、ここで働き続けたいだろうか」
「これから、どんな一週間を過ごしたいだろうか」
考えた結果、残ることを選んでもいい。相談してみて、離れる気持ちがはっきりすることもある。
どちらでも、自分の希望を知ったうえで選べる。
4.次の目標がなくても、気になる道は探せる
退職を考えると、辞めたあとの計画まで求められる。
何の仕事をするのか。どんな強みを生かすのか。将来、どうなりたいのか。
答えがあれば、準備もしやすい。でも、まだわからないこともある。
「少し休んでから考えたい」
「今までと違う仕事を知りたい」
「家族と過ごす時間を増やしたい」
そこから考え始めてもいい。休む時間にまで、立派な目標を用意しなくていい。
次の希望が見つかるまで、今の職場で待つだけではなく、外の仕事を知る方法もある。
求人を見る。気になる分野の話を聞く。短い講座を受けてみる。
面白そうだと思った仕事が、実際には合わないこともある。別の働き方を知って、今の仕事のよさに気づくこともある。
その経験も、次を選ぶ手がかりになる。
「時おり、マップ。」を使うなら、理由がうまく言えなくても、気になるところに○をつけてみよう。

休む。学び直す。職場を変える。小さな事業を試す。
一つに決めなくてもいい。自由欄に、自分が過ごしたい時間を書いてもいい。
○を眺めてみると、今は休みたい気持ちが強いのか、新しいことを試したいのか、少し見えてくるかもしれない。
最初から行き先を全部決めなくても、気になる方向を知ることはできる。
5.気持ちを受け止めたら、準備を始める
離れたいと思っても、すぐには動けないことがある。
毎月の生活費がある。家族と相談したい。仕事の引き継ぎも必要だ。
そんなときは、今の暮らしを続けながら、選べる条件を少しずつ整えていこう。
次の仕事に求めることを書いてみる。求人を調べる。休む期間を持ちたいなら、その間に必要なお金を確認する。
担当を調整できるか相談する。退職する場合の時期や、引き継ぎに必要なことを整理する。
気持ちが決まる前から、調べてよいこともある。
選べる仕事や、必要な準備がわかると、漠然とした不安も少し具体的になる。
会社に伝える理由は、そのあとで整えてもいい。感じてきたことを、すべて説明する必要はない。退職の意思と、時期や引き継ぎの相談を、伝えられる言葉にしていく。
自分の中には、感謝も、疲れも、興味もあるだろう。
一つの気持ちだけにまとめなくていい。
ここで経験したことを持って、次の仕事を選ぶ。お世話になった人に感謝を伝え、離れる準備をする。
これまでの時間を大切にしながら、これからの働き方を変えていける。
6.これから、心が動く時間を増やしていく
退職を考えていると、失うものが気になる。
収入、役職、慣れた仕事、人とのつながり。どれも、簡単には手放せない。
そのうえで、変えた先に持ちたい時間も考えてみよう。
落ち着いて仕事をする。違う分野を学ぶ。家族とゆっくり話す。休日に、仕事の連絡を気にせず過ごす。
そういう毎日を思い浮かべたとき、少し楽しみになるなら、その気持ちも大切にしたい。
辞めると決める前でも、始められることはある。
気になる仕事を一つ調べる。希望を誰かに話す。予定を一つ減らして、考える時間を持つ。
少し動いてみると、次に知りたいことが出てくる。休んでみて、忘れていた興味を思い出すこともある。
直感だけでは、その先に何があるかはわからない。それでも、「こちらに行ってみたい」という気持ちは、次の道を探すきっかけになる。
退職の理由を、今日、うまく説明できなくてもいい。
今、何に疲れ、何に心が動くのか。そこから、自分が過ごしたい毎日を考えてみよう。
まだ知らない仕事がある。会ったことのない人がいる。これから好きになることもあるかもしれない。
今の自分が気になるところから、次の時間をつくっていこう。

