趣味なのに、上達しないと楽しめない?下手なまま好きでいるということ
休みの日に、久しぶりに絵を描いた。
好きな色を選んで、紙に塗っていく。最初は、それだけで楽しかった。
でも、描き終えてから人の作品を見ると、自分の絵が急に物足りなくなる。
同じ時期に始めた人は、もうこんなに上手になっている。自分は、前とあまり変わっていない。
もっと練習したほうがいいのだろうか。きちんと習わないと、これ以上は無理なのだろうか。
さっきまで楽しんでいたはずなのに、足りないところばかりが気になり始める。
楽器でも、写真でも、料理でも、似たことはあるかもしれない。
好きで始めたことが、いつの間にか、上達を確かめる時間になっている。
上手になりたいと思うのは、自然なことだ。
ただ、上手になるまで、楽しむのを待たなくてもいい。
下手なままでも続けたいものが、自分の暮らしに一つあっていいのではないだろうか。
1.楽しかった時間が、人と比べたあとに小さくなる
自分では、少しうまくできたと思っていた。
ところが、ほかの人の作品を見たあとで、もう一度見直すと、よくないところばかりが目に入る。
形が違う。色が濁っている。思ったように仕上がっていない。
人の作品を見ることで、知ることは多い。こんな表現もあるのかと驚いたり、自分も試したくなったりする。
でも、それを自分の点数をつける時間にしてしまうと、好きだったことまで苦しくなる。
比べた相手は、長く続けているのかもしれない。使える時間も、目指しているものも違うかもしれない。
そう頭ではわかっていても、気になる日はある。
そんなときは、出来栄えを確かめる前の時間を、少し思い出してみよう。
色を混ぜていたときは、面白かった。難しいところで手が止まっても、もう少し描いていたかった。
人と比べたあとに自信がなくなっても、その前に楽しかった時間まで、なくなったわけではない。
作品への評価と、自分が過ごした時間。その両方を、別々に持っていていい。
2.休日にも、成長を確かめようとしている
仕事では、前よりできるようになることが求められる。
早く終わらせる。間違いを減らす。任せられる範囲を広げる。
そうした経験を重ねるうちに、時間を使ったら、何かが残るはずだと思うようになることがある。
休日に楽器を弾いたなら、一曲くらいは弾けるようになりたい。写真を撮りに出かけたなら、人に見せられる一枚がほしい。
何時間も使ったのに、たいして変わっていない。それでは、時間を無駄にした気がする。
けれど、その時間に求めていたものは、上達だけだっただろうか。
音を出すと、仕事のことを考えずに済む。カメラを持って歩くと、普段は通らない道に入ってみたくなる。料理をしている間は、目の前のことに手を動かせる。
自分がその趣味を好きな理由には、そうしたものもあるかもしれない。
何かが身についた日だけを、よい休日にしなくていい。
うまくできなかったけれど、またやりたい。そんな一日も残しておきたい。
3.上手になりたい気持ちは、捨てなくていい
下手でも楽しんでいいと言われると、上達を目指してはいけないように感じるかもしれない。
もちろん、そんなことはない。
弾けなかったところが弾ける。思い浮かべた形に、少し近づく。前にはわからなかった面白さが見えてくる。
続ける中でできることが増えるのは、うれしい。
先生に習ってもいい。目標を決めてもいい。じっくり練習したい時期があってもいい。
ただ、趣味に使える時間や気力は、いつも同じではない。
仕事が忙しい週もある。家の用事が続く月もある。休日は、何もせずに休みたいこともある。
そのたびに、続けられない自分を責めなくていい。
上達したいと思うことと、上達しない日は意味がないと思うことは、分けて考えられる。
今日は少し練習する。別の日は、好きなところだけ弾く。しばらく離れて、また触りたくなったら戻る。
自分の暮らしに合わせて、関わり方が変わってもいい。
長く楽しんでいる人にも、ずっと同じ熱量で続けてきた人ばかりではないだろう。
趣味にまで、毎月の成長報告を用意しなくていい。
4.一生のうちに、上手にならないこともある

大人になってから始めると、もっと早く出会いたかったと思うことがある。
子どもの頃から続けていれば。若い頃に、もっと時間を使っていれば。
今からでは、あそこまでは届かないかもしれない。
そう感じる寂しさもある。
何かを身につけるには時間がかかる。これからの時間を、全部そのために使えるわけでもない。
好きになったものすべてを、十分に上手になるまで続けることはできないかもしれない。
だから、少し考えてみる。
もし、思い描いたほど上手にならないとしても、この時間を持ちたいだろうか。
うなずけるものがあるなら、その気持ちも続ける理由になる。
簡単な曲しか弾けなくても、好きな音を出す時間がある。上手な写真は撮れなくても、季節が変わったことに気づく。毎年うまく育てられなくても、芽が出ると、またうれしくなる。
上達した未来に届かなくても、楽しんだ日は、すでに自分の暮らしの中にある。
限りのある時間だからこそ、成果の残ることだけに使い切らなくてもいい。
何を極めるかと一緒に、何をしながら過ごしたいかも考えてみたい。
5.人に見せる予定のないものを、つくってみる
出来栄えばかりが気になるなら、一度、人に見せる予定を外してみてもいい。
誰にも聴かせないつもりで、好きな曲を弾く。飾る場所を考えずに、絵を描く。写真を選び直さず、そのまま置いておく。
見せてはいけない、ということではない。あとで見せたくなったら、見せればいい。
ただ、始めるときから、誰かの反応まで用意しなくていい。
人に見せないと思うと、いつもなら選ばない色を使えるかもしれない。間違えたところで止まらず、最後まで弾けるかもしれない。
仕上げたくなければ、途中のままでもいい。
やってみて、やはり練習したくなることもある。思ったほど楽しくないとわかることもある。
そのときは、関わり方を変えても、別のことをしてもいい。
好きで始めたからといって、一生好きでいなければならないわけでもない。
続けることも、少し離れることも、自分の楽しみ方として選べる。
今日は、好きな色を一つ塗った
机に紙を置いて、水を含ませた筆を動かす。
思ったより色が広がった。少し濃すぎたところもある。
直そうかと思ったけれど、乾くまで、そのまま置いておく。
見本と同じにはならなかった。でも、この色は好きだと思う。
それくらいのことで、今日は筆を洗ってもいい。
誰かに褒められたわけではない。前より上手になったかも、よくわからない。
ただ、もう一度描いてみたいと思っている。
仕事をしていると、できることや、任せられることを説明する機会が多い。
その毎日のそばに、うまく説明できないまま、好きでいるものがあってもいい。
下手だけれど、これをしている時間が好きだ。
そう言えるものを、急いで別の価値に変えずに、暮らしの中に置いておきたい。

